「素因減額」は、交通事故の被害者がこうむった損害が、被害者自身の身体的・精神的な事情によって、通常よりも拡大しているような場合に、損害賠償額から減額する制度のことです。
素因減額が問題になる身体的な事情として、交通事故の前は出ていなかった症状が、事故をきっかけに一挙に現れる性質の疾患があります。具体的には、椎間板ヘルニア、変形性頸椎や腰椎、後縦靱帯骨化、脊柱管狭窄や分離、胸郭出口症候群、腰椎すべり等の症状です。これらは、交通事故で受診した際に、交通事故を原因として発症したものとして、診断書に記載されることも多いです。しかし、実際には、事故をきっかけとして初めて基礎疾患に気付くケースや、脊柱管の狭窄など実際は交通事故による外傷を原因として生じない症状もあるのが実情です。
このようなケースでは、事故後に痛みを感じるようになったなどの損害があったとしても、既に既往症として有していた疾患についての責任を加害者側に負わせるのは妥当ではありません。そこで、素因減額の対象として、損害賠償の対象外として減額される措置がとられます。