交通事故の後遺症で、手足にしびれが残って仕事に集中できないとか、首や頭の痛みで仕事に行けないときがある、などの症状が残る場合があります。このような後遺症が原因で、本来将来にわたって得られるはずだったのに失ってしまった利益のことを「後遺症による逸失利益」といいます。
後遺症による逸失利益は、通常、「労働能力喪失表」をもとに算定されます。ただ、逸失利益の考え方には、「差額説(後遺症による現実の収入減少額に注目する考え方)」と「労働能力喪失説(後遺症で喪失した労働能力に注目する考え方)」があり、事故前後で収入額が変わらなかった場合は、差額説だと損害が認められないのに対し、労働能力喪失説だと損害が認められるという違いが生じます。
その他のケースとしては、また、後遺症が原因で会社を退職した場合、会社の退職金規定や定年まで勤務を続ける可能性などを考慮して、実際に受け取った退職金と、その後勤め続ければもらえたはずの退職金との差額が逸失利益になる場合もあります。
実務では、後遺症による逸失利益は、基礎収入に労働能力喪失率(後遺症により失われた労働能力の割合)と、中間利息控除係数(労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数)を掛けて算出します。
後遺症による逸失利益=(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(中間利息控除係数)