交通事故の慰謝料は、被害者本人が請求するのが原則です。ただし、事情によっては、被害者本人以外が、慰謝料を請求できる場合があります。具体的には、被害者本人が死亡した場合と、後遺症が残った場合に分けて考えることができます。
被害者本人が死亡した場合
交通事故で被害者が死亡した場合、被害者本人の慰謝料請求権を、相続人は相続して請求することができます。また、相続した被害者本人の慰謝料以外にも、父母・配偶者・子には、大切な人を亡くしたことに対する固有の慰謝料請求権が認められます(民法711条)。
大切な人を亡くしたことに対する固有の慰謝料請求権が認められる近親者の範囲は、相続人とは限りません。過去の裁判例では、兄弟姉妹、内縁の妻、祖父母等についても、被害者との関係が特に深い場合には固有の近親者慰謝料の請求を認めたケースがあります。
被害者に後遺障害が残った場合
交通事故の被害者の近親者は、交通事故で被害者に後遺障害が残った場合に、固有の慰謝料を請求することができます。ただし、全ての場合で請求できるわけではなく、「死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合」に限り請求できるとされています。
具体的には、いわゆる植物状態になった場合や、重度の麻痺が残ったような場合など、精神・神経系統の障害で家族の介護の負担が重い場合に認められることが多いです。また、女の子の顔に大きな傷跡が残った場合に近親者固有の慰謝料請求を認めた例もあります。
被害者に後遺症が残った場合の近親者の慰謝料は、被害者死亡の場合と異なり、慰謝料総額の基準は定められていません。一般的には、後遺症の等級のほか、近親者と被害者の関係、今後の介護状況、被害者本人に認められた慰謝料額等を考慮して決められ、被害者本人の慰謝料の10~30パーセントが目安と言われています。