専業主婦・主夫のように、通常自宅で家事に従事している人を、「家事従事者」といいます。ただし、自分のために家事をする場合は家事従事者とはなりません。家事従事者の場合でも、交通事故で負った怪我などが原因で家事ができなくなった場合などに、休業損害を請求できる場合があります。
ただし、全ての家事従事者について休業補償が請求できるわけではありません。家事従事者が家事をできなければ、代わりに他の人が家事を行う必要がある場合に限って、他人のための労働として金銭的価値が認められ、休業損害の請求が可能になります。被害者が一人暮らしの場合は、自分が生活するために家事をしているので、他人のための労働、つまり金銭的価値を有する労働とは言えず、そもそも家事従事者にはあたらないので、原則として休業損害は認められません。
家事従事者であれば、男女どちらでも性別は問いませんが、休業損害の基礎となる平均賃金については、主夫の場合でも女性の平均賃金が基準になります。これは、平均賃金が男性の方が多いために、同じ家事労働をする男女間で金額に差が生じる不公平を避けるためです。
裁判で家事従事者の休業補償が認められた例としては、以下のようなものがあります。
- パートや内職で働きながら父親の介護をしていた29歳女性の被害者に、女性学歴計年齢別平均賃金に基づく金額の休業損が認められたケース(神戸地判平14.1.17)
- 交通事故で夫を亡くした専業主婦の妻に、夫のために家事に従事しなければ働く選択肢もあったと考えられるとして、休業損害が認められたケース(名古屋地判平23.4.1)
- 育児休業中に交通事故に遭い、職場復帰予定日に復帰できなかった兼業主婦に、育児休業中は賃金センサスを、復帰予定日から復帰日までは育児休業前の年収を基礎収入として休業損害が認められたケース(大阪高判平16.9.17)