「素因減額」は、交通事故の被害者がこうむった損害が、被害者自身の身体的・精神的な事情によって通常よりも拡大しているような場合に、損害賠償額から減額する制度のことをいいますが、その割合はケースによって様々です。
実際、一定の基準が存在しているわけではなく、個別の事案に応じて10~90%の間で判断されます。ただし、裁判で素因減額が争われる場合には、以下のような要素が判断の基準になるとされています。
- 交通事故の態様、事故車両の損傷状況
- 既往歴の有無や、既往症の内容や程度
- 交通事故で被った傷害の治療に必要とされる平均的な期間
- 通院の態度や程度、症状の経過、事故前後のストレス感受性の有無や程度など
交通事故の症状が悪化したり治療が長期化している場合、上記の要素に全て該当するようなケースでは、事故前からの既往症や本人の事情が主な原因であるとされ、50%以上の素因減額がされる傾向にあります。
過去の裁判例では、塗装業を営む中年男性が、軽微な交通事故で後遺障害等級7級に認定されたケースで、現れた頸髄症等の症状は以前仕事で屋根から転落した際の症状が影響を与えたとして、損害の90%が減額された例があります(東京地裁H15.3.26)。
素因減額は、交通事故の前後の状況や専門的知見など、様々な要素が関係する問題なので、素因減額が問題となるような場合は弁護士に依頼されることをお勧めします。