交通事故で労災保険を使用した場合、健康保険を使用した場合と同様のメリットがあります。大きく分けると、以下の2つのメリットに分けることができます。
①自賠責の枠を有効利用できる
交通事故の診療で労災保険を使用した場合は、受診者は窓口で治療費を払う必要がありません。そのため、自賠責保険の120万円の枠を、治療費負担以外の有効な方法で利用することが可能になります。
②休業損害を多く受け取ることができる
労災保険では、労働災害による休業期間について休業補償金(平均賃金の60%相当)と、休業特別受給金(平均賃金の20%相当)を受けることができます。休業特別受給金は、加害者に対する損害賠償額から控除されないので、被害者が加害者に請求できるのは40%(休業損害額-休業補償給付分60%)ということになります。そのため、最終的に被害者が受け取ることができる給付は、休業損害の120%になるというメリットがあります。
被害者の過失割合が20%の場合の例を具体的にみると、以下のようになります。
労災保険を使用しない場合
損害額が300万円発生したとします(治療費200万円+入院慰謝料40万円+休業損害60万円)。被害者が300万円を保険会社に請求すると、20%の過失相殺がされるので、被害者が受け取る保険金は300万円×80%=240万円になります。しかし、被害者は診療時に病院に200万円を払っているので、実際手元に残るのは240万-200万=40万円です。
労災保険を利用した場合
治療費は払う必要がないので、損害額は100万円です(入院慰謝料40万円・休業損害60万円)。被害者が労災保険に休業損害を請求すると、休業損害額の60%分+特別受給金20%分が給付されますが、特別受給金は加害者への損害賠償額から控除されないので、加害者に対しては40%(100%-60%)の休業損害が請求できます。そのため、被害者は、労災から受けた休業損害額の80%分の給付に加え、加害者からは休業損害40%分から過失割合20%を控除した額の損害賠償と慰謝料を請求でき、結果手元に残るのは99万2000円です。