学生や幼児など、就労前で働いていない人のことを、交通事故の実務上は「未就労者」と言います。実際に働いていない未就労者でも、逸失利益は認められます。未就労者の逸失利益は、以下のように計算します。
未就労者の逸失利益は、原則として、男女別の全年齢平均賃金を基礎として計算します。
男女別の賃金センサスに基づくと、男子の平均賃金よりも女子の平均賃金のほうがかなり低額に設定されています。しかし、一般的な労働者の就労状況等や、女性が広く社会で活躍している現代の社会環境を踏まえると、男女間の賃金格差は、今後縮小する方向に向かうと考えられています。このような観点から、裁判の実務では、交通事故に遭った未就労者の基礎収入を算定する際、「年少女子」については、男女を合わせた全労働者の「学歴計全年齢平均賃金」を基礎収入と認定するケースが一般的です。
「年少女子」に関して、年齢の上限などを定めた具体的な規定は存在しません。ただし、実務では、少なくとも中学卒業までは「年少女子」に含まれるとされています。高校生については争いがあるので、被害者側から、積極的に「男女平均賃金」を用いて算定すべきという主張を行っていくことが求められます。