交通事故で怪我をした場合、「傷害慰謝料」を請求することができます。「傷害慰謝料」は、おもに「入通院慰謝料」に関係する慰謝料で、交通事故で医療機関に通院や入院をせざるを得なかったことによる、精神的損害に対する慰謝料のことをいいます。入通院慰謝料額は、通院や入院した期間に応じて作成された算定基準に基づいて計算されるのが原則です。ただし、交通事故の事故態様や、怪我の程度や部位に応じて増額されることもあります。
入通院慰謝料は、①自賠責保険、②任意保険、③裁判所で異なる基準が用いられています。
①自賠責保険による基準
自動車損害賠償保障法で定められた、自賠責保険制度による基準です。具体的には、1日4200円×実治療日数(実際に入通院した日数)×2で計算しますが、実治療日数×2が総治療日数(初診日から治療終了日までの総日数)を超える場合は、総治療日数が上限です。自賠責保険基準では、早く支払が受けられる反面、上限金額があるので、損害の全部はカバーできません。また、自賠責保険を利用する場合は、以下の点に注意しましょう。
- 指圧、鍼灸、あんま、マッサージの施術については、実治療日数で計算する。
- 長管骨の骨折等によるギプス装着期間は、実診療日数として計算する。
- 最終治療日の診断書に、「継続」「転医」「中止」の記載がある場合には、総治療日数+7日で計算する(あんま、マッサージ、指圧師、鍼灸師は除く)。
- 同一日に複数の医療機関で診療を受けた場合、治療日数は1日で計算する。
②任意保険による基準
保険会社ごとの独自の定めによる支払基準です。保険会社にとっては、保険金の支払額が少ないほど会社の利益になるので、自賠責保険でカバーできない損害を補填しつつも、裁判所の基準より少額になる場合が多いです。
③裁判所基準
裁判になった場合の、裁判所が下すであろう判断を基にした損害賠償額の目安です。通常、自賠責・任意保険の基準より高額になります。公表はされていませんが、「青本」と「赤い本」の内容がこれに適合していると言われています。「赤い本」の入院・通院欄を組み合わせた表に基づいて慰謝料の金額を求めますが、あくまで基準額で、名古屋・大阪など異なる基準を用いる地域もありますし、必ずしも裁判で認められる金額とは限りません。