自営業、会社経営など、自ら事業を行っている人のことを、交通事故の実務上は「事業所得者」と言います。事業所得者の逸失利益は。以下のように計算します。
事業所得者の基礎収入は、原則として事故に遭う前年の申告所得額を基礎にします。
具体的には、税金対策で申告所得額を低く提出した場合でも、申告所得額が基礎収入となります。ただし、申告額よりも実際の収入が多いことを主張・証明できれば、実収入額が基礎収入とされる場合もあります。また、確定申告をしていないケースでは、平均賃金を参考に基礎収入が認定されることもあります。これらは、休業損害の場合と同じですが、逸失利益の算定では、確定申告額に固定経費分を上乗せしない点で休業損害と異なります。
また、事業所得者が会社役員でもある場合は、役員報酬の中で、労務提供の対価部分については逸失利益が認められますが、利益配当としての部分については認められにくいです。
なお、事業者だけでなく、家族従事者の労働も所得の一環になっているような場合は、総所得に対する被害者の貢献度(寄与分)の割合によって、基礎収入が算出されます。
事業所得者の逸失利益の例外として、事業所得者の場合でも、事故当時概ね30歳未満の若年者の場合は、賃金センサスの平均賃金が基礎収入とされることが多いです。同様に、現実収入が平均賃金以下の場合で、将来的に平均賃金が得られる可能性が高い場合は、賃金センサスによる平均賃金を基礎収入とすることが認められます。