交通事故に遭った場合の慰謝料は、交通事故の数が多く迅速な慰謝料の支払いが求められることや、被害者の公平を図る趣旨から、事故の事情や怪我の程度などを考慮した基準に基づいて、できるだけ一定の金額にする方向になっています。
ただし、被害者を公平且つ適正に救済しようとする趣旨から、事故の態様や個別の事情がある場合には、慰謝料の増額が認められることもあります。
具体的には、交通事故の態様が悪質なケース(故意に事故を起こした、重大な不注意があった、飲酒運転、著しいスピード違反など)や、加害者の態度が著しく不誠実なケース(被害者を助けなかった、謝罪をしない、嘘をつくなど)が、慰謝料を増額すべき事由として考慮されます。ただし、お見舞いに来た加害者の態度が冷たいとか、反省しているように感じられないなどの程度では、「著しく」不誠実な態度とは評価されません。
また、個別の事情として、妊娠中の女性が、交通事故が原因で流産したケースや、交通事故の被害者親族がショックで精神疾患に罹患したなどの事情が慰謝料を増額すべき事由として考えられます。
さらに、慰謝料以外の損害賠償をカバーする意味での増額が認められる場合もあります。具体的には、交通事故で顔などに傷跡が残った場合の逸失利益や、将来必要となる手術費の算定が困難な場合の将来治療費の代わりに、慰謝料を増額して全体の損害賠償金額のバランスを保つケースがあります。