交通事故では、多くの場合、加害者だけでなく被害者にも「過失」(不注意)が認められます。加害者と被害者の過失の割合を「過失割合」といい、過失割合に基づいて、加害者が被害者に支払う損害賠償額を減額する仕組みが「過失相殺」です。
過失割合は、裁判所、弁護士、保険会社のいずれも、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(判例タイムズ社)に記載された基準に従って判断します。この基準は、交通事故の態様や類型によってそれぞれ定められています。
基準の改訂によって内容や件数は変更されますが、発生しうる交通事故の類型として273件のケースが挙げられています。実務では、問題の交通事故が、基準のどの類型に近いかを調べて基本的な過失割合が認定されます。その上で、交通事故当時の状況や事情から「修正項目」に基づいて個別に調整が行われ、過失割合が決まる仕組みになっています。
具体的なケースを見てみましょう。例えば、「信号機のある交差点で、黄色信号で直進した自転車と、赤信号で直進した自動車の衝突事故」では、類型上、自転車側:自動車側の過失割合は10:90とされています。ここで、「自転車が赤信号に変わる直前に交差点に進入した」という事情があった場合、自転車側に5%の過失がプラスされるという修正要素が加えられます。つまり、自転車側の過失が10%、自動車側の過失が90%という基本割合が修正されて、最終的な過失割合は、自転車側の過失が15%(10+5)、自動車側の過失が85%(90-5)となるのです。