休業損害を請求できるのは、原則として会社役員本人ですが、例外的に、会社からも休業損害の請求ができる場合があります。
会社役員は、単に名前だけ会社に連ねている名目上の役員と、実際に会社に勤務する役員の2種類に分けられます。実際に勤務している会社役員が、交通事故で休業した場合に、会社が、生活費支援名目などで役員報酬の相当額を支払うようなケースがあります。この場合、本来は加害者側が支払う休業損害を、会社が立て替えて支払ったのと同じように考えることができます。そこで、このような場合には、被害者である会社役員が所属する会社が、加害者に対して、役員に支払った報酬のうちの労務対価部分を「間接損害」として請求できる可能性があります。
会社役員の休業損害については、役員報酬である利益配当部分と労務対価部分の区別が重要になりますが、会社役員が受け取る報酬は、両者がはっきり分けられているわけではありません。そこで、役員報酬の内訳は、会社の規模や営業の状態、交通事故の被害者である会社役員の報酬額や仕事内容、他の役員や従業員の給与や職務内容等を、総合的に検討することになります。会社役員の休業損害などを算定する際は、役員本人の給与額に関する書面に加え、会社の決算資料など多くの書類が必要となるケースが多いので留意しておきましょう。