遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、自分で保管する必要があります。遺言は、故人(被相続人)の死後の財産の変動を伴うものなので、保管には十分留意する必要があります。
具体的には、遺言の種類に応じて以下のように保管します。
公正証書遺言
公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されるため、紛失の心配はありません。相続人などが公証役場で遺言書の開示や閲覧を要求しても、公証人が応じることはありません。相続人など利害関係を有する人には、遺言書を作成した公証役場を伝えておけば足りますが、故人と利害関係を有する人は、公正証書遺言が作成されているかを全国の公証役場で検索できます。その際は、故人と検索者の関係が分かる戸籍謄本と、検索者の身分証を持参して下さい。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、自身で保管する必要があります。発見されやすいと偽造・変造の危険があり、隠しすぎると紛失や忘れ去られる恐れがあります。遺言書は、生前は発見されづらく、死後は確実に発見され、変造が行われない場所で保存しておくのが望ましいです。
具体的には、相続人などの利害関係者に預けると、隠匿・改ざんやトラブルの元になる危険があるので、利害関係のない第三者に保管してもらう方が良いでしょう。銀行の貸金庫もよく利用されますが、貸金庫の開扉は相続人だけで行うので、相続人以外の者に遺贈する場合は注意が必要です。信託銀行に「遺言の保管・執行」を依頼することも可能ですが、手数料金が100万円超と高額になりがちです。
遺言書が第三者によって偽造・変造されることを防ぎ、かつ確実に見つけてもらうには、遺言書の存在と保管場所を信頼できる人に伝え、死後に相続人や遺贈をした人などに報告するように依頼しておく方法もひとつです。弁護士に保管を依頼した上、遺言書でその弁護士を遺言執行者に指定しておくことも有効です。