故人(被相続人)が亡くなると、被相続人がかけていた生命保険の保険金が支払われます。遺産相続では、生命保険金が相続財産になるかが問題となりますが、通常、生命保険金は相続財産には含まれません。なぜなら、生命保険金は、保険金の受取人に指定された人の固有の財産として扱われるからです。
ただし、生命保険契約の内容や、受取人の指定の方法によって、取り扱いが異なる場合があります。
受取人を特定して指定されている場合
生命保険金の受取人が、特定の人に指定されている場合、生命保険金は指定された人の固有の財産になり、相続財産には含まれません。受取人が相続人の一人に指定されていた場合も同様に、相続人の固有財産になります。そのため、相続財産には含まれず、遺産分割の対象にもなりません(最判昭和40.2.2、最判平成14.11.5参照)。
相続人と指定している場合
指定がある以上、相続財産の対象に含まれず、相続人の固有財産になります。したがって、遺産分割協議を行う必要はありません。相続人が複数いる場合は、各自の法定相続分に応じて、生命保険金請求権を取得するとされています。この場合、相続手続きとは別に保険会社に対して保険金の請求を行うことになります。保険金は相続財産ではないので、相続放棄をしていても受け取れますし、保険金を受け取っても相続放棄ができます。
受取人が「故人(被相続人)」とされている場合
受取人が亡くなった本人の場合は、保険金請求権は相続財産に含まれます。したがって、遺産分割協議を行う必要があります。
受取人の指定がない場合
受取人を指定していない場合は、相続財産に含まれず、受取人固有の財産となります。受取人は、保険契約約款に従って決定します。約款で、配偶者を第一順位の受取人とする規定があれば、生命保険金は配偶者に支払われ、保険金は配偶者の固有財産になります。約款で受取人が特定されず、「被保険者の相続人に支払う」とだけ規定されていた場合は、保険金は相続人の固有財産となります。