遺産分割協議は、必ず相続人全員で行う必要があります。行方不明の相続人を除外して遺産分割協議を行い、遺産分割をしても、その遺産分割は無効となります。また遺産分割協議をせずに、相続人が相続財産を処分することはできません。
相続人の中に行方不明者がいるなど、連絡が取れない相続人がいる場合は、家庭裁判所に申し立てをして、不在者財産管理人を選任してもらいます。多くの場合、家庭裁判所が選んだ弁護士が不在者財産管理人に就任します。この不在者財産管理人が、不在者が見つかったり死亡するまで、不在者の財産を管理することになります。
不在者財産管理人の選任手続は、相続人からの申し立てを受けた裁判所が、申立人や不在者の親族等に事情聴取を行うと同時に、不在者ゆかりの自治体などに年金の振込や税金の納付状況等を確認します。実際は申立人側でこれらの調査をすることも多いようです。これらの調査を経て、家庭裁判所が行方不明を認めると、不在者財産管理人が選任されます。
不在者財産管理人は、原則として不在者の財産の管理・維持が職務ですが、家庭裁判所が認めた場合に限り、例外的に財産の変更・処分を行うことができます。遺産分割協議も相続財産の変更・処分に含まれるので、相続人の中に行方不明者がいる場合は、家庭裁判所の許可を得て、不在者財産管理人と相続人全員が遺産分割協議を行うことになります。
実務では、不在者財産管理人の選任申立から、家庭裁判所から遺産分割協議の許可がもらえるまでに1年以上かかる場合もあります。相続人の中に行方不明者がいる場合は、早めに裁判所に申し立てるとよいでしょう。