故人(被相続人)の預貯金は、遺産分割をしなくても相続人は法定相続分に応じた権利を当然に取得します。過去の裁判例では、預貯金(預金債権)は分割できるので(可分債権)、相続分に応じて相続人に承継され、各相続人は自己の相続分について預貯金の払い戻しを請求できるとされています。ただし、実際に銀行からお金を下ろすには、銀行の内部規定に従って様々な手続きを取らなくてはいけません。
実務では、金融機関が預金者の死亡を知るとその口座を「凍結」します。口座が凍結されると、出金ができなくなります。自動引落が設定されていた公共料金等も支払えなくなるので、当座の生活資金や葬儀費用などは別名義の口座に預金しておくとよいでしょう。
実際に払い戻しをうけるための具体的な方法としては、遺言により相続される場合と、遺産分割協議により相続される場合で必要な書類が変わります。具体的には以下のような書類を金融機関に提出しなければなりません。
遺言により相続される場合
- 遺言執行人の指定がある場合
- 遺言書(自筆証書遺言(検認調書など)、公正証書遺言)
- 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または全部事項証明
- 遺言執行者の印鑑登録証明書(発行後6ヶ月以内のもの)
- 家庭裁判所で遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者の選任審判書謄本
- 遺言執行人の指定がない場合
- 出生から死亡までの、被相続人の戸籍謄本または戸籍の全部事項証明
- 相続人全員の戸籍謄本または戸籍の全部事項証明
- 相続人全員の印鑑登録証明書(発行後6ヵ月以内のもの)
遺産分割協議により相続される場合
- 遺産分割協議書(弁護士に調停を依頼したときは調停調書)
- 出生から死亡までの被相続人の戸籍謄本または全部事項証明書
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
- 相続人全員の印鑑登録証明書(発行後6ヵ月以内のもの)