法定相続人が最低限受け取ることができる相続財産を「遺留分」と言います。遺留分の額は、故人(被相続人)の相続財産額に遺留分の割合をかけて計算します。実際に遺留分が侵害されているかどうかは、「愛人に全財産を相続させる」などの、遺言を前提として受け取る財産と、遺留分の額とを比較して判断されます。
遺留分を請求できるのは、配偶者、子ども、親などの直系尊属のみです。兄弟姉妹は法定相続人ですが、遺留分の請求ができません。遺留分の割合は、被相続人の配偶者または子どもが相続人になる場合は法定相続分の2分の1、被相続人の親などの直系尊属のみが相続人になる場合は法定相続分の3分の1と決められています。
遺留分を計算する際の基礎になる財産は、相続開始時の財産に、被相続人の相続開始(死亡)1年以内に贈与した財産を加えて、借金などのマイナスの財産(相続債務)を引いたものです。相続開始1年より以前の贈与は、贈与した側と受贈者の双方が、相続人の遺留分を侵害すると知っていた場合に限って加えます。相続人が生前に特別の支援を受けていた場合などの「特別受益」も遺留分算定の基礎となる財産に加えます。
具体例として、1000万円の遺産がある父が死亡し、相続人として長男・次男の2人がいる場合に、父が相続開始の半年前に長男に200万円を贈与し、「全財産を長男に相続させる」という遺言を残したケースを検討します。
遺留分の基礎財産となるのは1000万円+200万円の1200万円です。長男・次男の遺留分の額は、基礎財産×法定相続分×2分の1となるので、1200万円×2分の1×2分の1=300万円となります。そして、次男の遺留分侵害額は、遺留分の額-遺産取得額となるので、300万円-0円=300万円です。よって、次男は長男に対し300万円を減殺請求できます。