一般的に「事実婚」と言われる、婚姻届を提出しない夫婦関係を、法律上は「内縁関係」といいます。内縁関係の場合、法律上の夫婦と異なり、お互いが相続人とならず、お互いの財産について一切の相続権が発生しません。そのため、内縁の妻は相続することができません。
このように、内縁の妻に相続権はありませんが、居住権については学者の中でも意見が分かれています。具体的には、内縁の夫が亡くなった場合に、内縁の妻が内縁の夫を相続して、内縁の夫の持ち家に住み続けることができるか、というケースなどで問題になります。
過去の裁判例の多くは、内縁の夫の法定相続人(子どもや親など)に、その建物を使用しなければならない差し迫った必要がなく、他方で、内縁の妻の側に、建物を明け渡して家を出ていくと家計上相当な打撃を受けるおそれがあるといった事情がある場合には、相続人から被相続人の内縁の妻に対する建物明渡請求を権利の濫用として、明渡請求を認めないという判断を下しています。したがって、内縁関係にあっても、事情によっては、住み続けることができるでしょう。