「特定の相続人に全財産を相続させる」という内容の遺言書も有効です。ただし、故人(被相続人)の兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(民法1028条)があります。遺留分とは、法定相続人が最低限相続できる財産のことをいいます。そのため、全財産を一人に相続させるという遺言があっても、相続人は最低限の相続分は受け取ることができます。
具体的には、遺言書に法定相続人に相続財産が渡らない内容が書かれているような場合に、法定相続人が、遺留分減殺請求(民法1031条)を行って遺留分を請求します。遺留分は当然もらえるものではないので、自分で請求しなければなりません。通常の相続よりも相続財産は少なくなりますが、最低限の相続財産は受け取ることができます。
遺留分減殺請求は、相続開始・相続人の遺留分を侵害する遺贈や贈与があったことを知った時から1年以内に行う必要があります。請求は、贈与などを受けた相手方に行います。トラブルを最小限に抑えるために、まずは相手方に内容証明を送り、遺留分を請求する意思があることを示しておくことをお勧めします。内容証明で証拠に残しておくことで、後に紛争化した際に役立つことが多いです。相手方が請求に応じてくれない場合は、家庭裁判所で調停や審判を行うことになります。