現金は、当然に分割されるものではなく、遺産分割の対象になります。そのため、遺産分割が成立するまで支払いを求めることはできません。ただし、複数存在する相続人全員が合意をすれば、先に現金だけ分割することは可能です。
預貯金の場合は、払い戻し請求権という権利を相続することになるので、複数の相続人がいる場合は、相続開始と同時に法定相続分に応じて当然分割されます。しかし、現金の場合は、物体(有体物)である動産と捉えられるため、遺産分割によってはじめて、各人の相続分が決まると考えらます。
したがって、相続開始後・遺産分割前に、相続人のうちの一人が現金をまとめて持っているようなケースでも、自分の相続分の現金を渡すよう求めることはできません(最二小判H4.4.10)。