相続人が、認知症やその他の痴呆の症状が出ている人でも、相続人としての権利を有しています。そのため、認知症などで、意思能力がなく、自身で物事を判断することができない状態でも、相続することができます。
ただし、相続人が複数いて、遺産分割協議をする場合は注意が必要です。遺産分割は法律行為なので、遺産分割を有効に行うためには、遺産分割を行う相続人全員が、有効に法律行為を行える能力(意思能力・行為能力)がなければなりません。したがって、意思能力がない認知症の方が遺産分割協議をしても無効になるのが原則です。
認知症の程度は人によって異なるため、それぞれの状態に応じて検討する必要があります。具体的には、重い認知症で意思能力がない場合は、遺産分割協議に参加しても分割協議が無効となる可能性が高いです。後から無効主張されて遺産分割の結果が変わることを防ぐためには、遺産分割協議前に、家庭裁判所に後見開始の審判の申し立てをしておくことが必要です。裁判所に後見開始の審判と成年後見人を選任してもらった上で、認知症の方に代わって成年後見人が遺産分割協に参加します。
他方で、認知症がさほど重くなく、意思能力が不十分という程度の場合は、補佐開始の審判の申し立てをし、家庭裁判所で補佐開始の審判と補佐人を選任してもらいます。