特定調停にはメリットが多い反面、デメリットもあります。
手続きが難しく、取り立てが止まるまでに時間がかかる
特定調停は、簡易裁判所に申立を行いますが、申立書以外にも、関係者の一覧表や財産に関する明細書が必要です。これらは自分でもできますが、手続きは煩雑です。特定調停を申し立てると、貸金業者からの取立は原則止まりますが、手続に時間がかかる分、督促が止まるまでの時間もかかると考える方がよいでしょう。
簡単に差押えされやすくなる
特定調停が成立すると調停調書が作成されます。調停調書通りに返済できなくなった場合、貸主は調停調書に基づいて強制執行ができるので、給料などが差押えられてしまう恐れがあります。特定調停をする際は、合意の通りに返済できるか十分検討する必要があります。
過払い金の返還ができない
特定調停は、利息制限法の上限金利に引き直して減額した借金を、どのくらいの期間で返済するかを合意する制度で、過払い金の返還とは別物です。そのため、過払い金が発生していた場合は、別に過払い金返還請求訴訟を起こさなければいけません。任意整理では、返還された過払い金を前提に返済計画が立てられる点で異なります。ただし、特定調停をした後に、もっと前の取引が判明し過払い金の発生がわかった場合や、過払い金の返還ができるのに請求せずに調停をした場合は、事後的に過払い金請求をすることが可能です。
調停委員がプロとは限らない
簡易裁判所に選ばれるとはいえ、残念ながら調停委員が債務整理の専門家とは限りません。そのため、引き直し計算をしない、将来利息をカットしないなど、借主に不利な条件で調停が結ばれることもあります。
特定調停が成立しない場合がある
特定調停は債権者との合意に基づく債務整理なので、債権者が同意しないと調停が成立しません。同じ裁判所が関与する債務整理でも、債権者の同意がいらない自己破産や、債権者の過半数または債権額の1/2以上の反対がなければ、全債権者に対して債務整理の効果を及ぼすことができる民事再生(小規模個人再生)より、ハードルが高いといえるでしょう。